くりこみ理論


 自然界では無数の粒子が生成消滅を繰り返しており、総ての自由度を一度に考慮すれば、到底人間が自然を理解することができるとは思われません。しかし、幸いにして我々は自然界の総てのスケールを同時に見ることはできません。そこで着目するスケールの世界に特徴的な変数だけを用いた有効理論によって自然を記述します。特に、有限個の変数だけを含む有効理論で、そのスケールに特徴的な現象を説明できたときに、自然現象を本質的に理解したと考えるでしょう。このように、無限個の変数の中から自然を理解する上で本質的な変数だけを残し、興味のない変数を消去してしまう操作を「くりこみ」と呼びます。消去した自由度の効果が、残された理論のパラメーターに繰り込まれるからです。特に、ミクロ変数を消去する際に、マクロ理論の有限個のパラメーターだけに繰り込むことができる場合にくりこみ可能と呼びます。このように、くりこみ可能性が人間が自然を理解できることと密接に関わっているように思われます。
 朝永振一郎氏は量子電気力学という特定の理論において、質量と電荷がスケールによりどのように変化するかを論じましたが、私たちのもくろみは無限個のパラメーターを持つミクロ世界の一般的場の理論から出発して、どのようなマクロ理論が出現するのかという、スケールによる理論の移り変わりを研究することです。しばしば、マクロ世界の法則はミクロ世界の法則の詳細には依らず、普遍性を持った理論がマクロな世界を支配しています。従って、私たちはマクロ世界に実現する普遍的法則の分類を目指していると云うこともできます。
 数ある場の量子論の中でも、現在の素粒子論は摂動論的にくりこみができる理論を使って組み立てられています。もし上のような方法で非摂動的にくり込みができる理論が存在することが分かれば、現在の素粒子論の枠組みは大きく変わる可能性があります。
(詳しい解説)

トップページへもどる
直線上に配置