My research


理論物理学 : 素粒子理論

 現在の素粒子物理学には二つの大きな課題が立ちはだかっています。 素粒子とその相互作用の検証と統合です。私はこの二つの課題に立ち向かいます。

 自然界を構成する基本物質は何か、それらはお互いにどのように相互作用しあうのか、 見えない基本粒子をどのようにして見るのか、隠れた相互作用をどのように断定するのか、 自然現象、宇宙現象はすべて理解できるのか、宇宙の誕生から今日までの歴史は 説明できるのか、素粒子物理学はこれらの問いに答えます。

 標準理論によると、自然界の基本構成粒子はクォークとレプトンであり、 少なくとも5つの相互作用がある。その相互作用とは、重力、電磁相互作用、 強い相互作用、弱い相互作用、それにヒッグス相互作用である。最初の4つは 直接的に確認されているが、ヒッグス相互作用だけはまだわからない。 このヒッグス相互作用とそれを媒介するヒッグス粒子を直接検証する実験が この秋よりLHCで始ます。今後5年の物理の中心課題の一つです。

 標準理論は最終理論だろうか。答えは、多分にNO。標準理論のほころびが 最初にでるのはヒッグス粒子の部分だろう。様々な可能性があるが、私は ヒッグス粒子とゲージ場が高次元理論の中で統一される可能性も探っています。 ヒッグス相互作用がゲージ原理と時空構造で決まり、LHCで検証可能となります。 この他にも、超対称性の可能性、更にエネルギースケールをあげれば ゲージ理論の枠内で大統一の可能性がみえてきます。更に、近年観測された ニュートリノの大きな混合現象は、背後に標準理論では見えない対称性の存在を 示唆しています。

 暗黒物質、暗黒エネルギーの存在は単に宇宙論の問題ではありません。 これは、標準理論を超えた素粒子理論が解くべき現代物理の最大課題の一つです。

 そして究極の課題、重力の統合の問題があります。 現在、重力の量子論として整合性のある理論は、超弦理論のみです。 超弦理論は、物質の基本構成要素が点粒子ではなく弦であり、また時空は10次元もしくは 11次元であるとし、自然観の変換をもたらすことになります。 今のところ超弦理論の検証は夢の域を出ていませんが、 将来必ずや自然現象と結びつくことになるでしょう。 近年では、場の量子論と同じように、超弦理論も一つの理論の枠組みとして 様々な物理現象の記述に応用され始めており、 その有用性が期待されています。

 私の研究指針は、自然現象が与えてくれるヒントをもとに理論を構築することにあります。