素粒子論(窪田)グループ(全学教育推進機構)

スタッフ

窪田 高弘(教授)

研究分野

素粒子論、重力理論、素粒子論的宇宙論

研究目的

素粒子実験や宇宙観測の最新のデータを視野に入れた, 現象中心の素粒子理論を発展させるのみならず、重力理論、超弦理論をも含めた数理的な方法による解析も同時並行で進めていく。そうすることによって素粒子の標準理論の奥に潜むものを追究していく。

研究テーマ

超対称ゲージ理論、超重力理論、超弦理論、インフレーション宇宙論、CP 対称性の破れ、ヒッグス粒子、ニュートリノ物理学

研究内容

1. ゲージ理論と重力理論の双対性

反ド・ジッター空間上の超重力理論とその境界上の共形不変なゲージ理論の間には、神秘的な対応関係があることが指摘されている。その事実に刺激を受けて、われわれは3次元アインシュタイン重力にチャーン・サイモンズ項を加えた理論でのヴィラソロ代数の導出法、境界の場の理論でのくりこみ群の流れ等を研究してきた。現在われわれは、4次元カー・ブラックホールのホライズン上の共形場理論の基礎付けを研究中であり、ブラックホールの構造研究の新しい手法開発に努力している。

2. 場の理論の手法の宇宙論への応用

宇宙の3度K背景輻射の揺らぎ観測は、揺らぎの非ガウス性の発見への期待から、場の量子論の手法を宇宙論に応用する研究を刺激している。われわれも曲率摂動の相関関数の共形変換不変性を証明するなど、素粒子論の手法の適用領域拡大に努めてきた。現在はド・ジッター空間のSO(1,4) 対称性を非ガウス性に応用する研究、QCD で開発された有効場理論の方法をインフレーション宇宙論に適用する研究を進めている。

3. CP非対称性の新しい起源を探る

初期宇宙でのバリオン数生成を実現するためには、小林・益川理論を越えた新しいCP 対称性の破れの起源を探究する必要がある。J-PARC 等での電気双極子能率の測定実験はその意味で大変に刺激的で、われわれもR-parity を破る超対称模型を用いて実験データの分析を行っている。また、中性子崩壊における様々な非対称パラメーターの測定もPSI やJ-PARC で進行しつつあり、それらの解析も進めている。これらの研究では原子核理論グループとの連携が不可欠になる。

4. ヒッグス粒子やニュートリノの諸性質

ヒッグス粒子崩壊の確率をQCD 補正まで含めて精度良く計算することは長年の研究テーマである。LHC 実験のデータ蓄積に歩調を合わせ、今後は輻射補正の再検討を通じて, 次なる新粒子の発見のヒントを得る研究に繋げていきたい。また長基線ニュートリノ実験を基礎にして、レプトン・セクターにおけるCP の破れを発見する研究にも今後進んでいきたいと考えている。

研究協力

素粒子理論(細谷)グループ,素粒子理論(大野木)グループ,素粒子理論(橋本)グループと共同でさまざまな研究活動を行っている。毎週コロキウムと文献紹介セミナーを全員参加で開催している。実験や観測との関連を特に重視し、阪大の実験グループや他大学、研究所の実験・理論グループとも積極的に交流を行っている。