経歴

経歴

1962年生まれ。広島市出身。

  • 1984年3月:東京大学 理学部 物理学科卒業
  • 1986年3月:東京大学 理学系研究科 物理学専攻 修了 理学修士
  • 1989年3月:東京大学 理学系研究科 物理学専攻 修了 理学博士
  • 1989年4月:学振特別研究員(PD) (高エネルギー研究所)
  • 1990年5月:広島大学 理学部 助手
  • 2001年4月:京都大学基礎物理学研究所 助教授
  • 2009年6月:大阪大学 大学院理学研究科 教授
  • 1993年10月〜1994年10月:仁科財団海外特別研究員(フェルミ国立加速器研究所)
  • 1994年10月〜1995年10月:客員研究員(フェルミ国立加速器研究所)

専門:素粒子論

格子ゲージ理論を用いて クォークのもつ未知の相互作用の解明など素粒子現象論の研究、場の理論の定式化と数値計算による非摂動的解法の探求の研究を行っています。

素粒子論の目的や現在の世界での研究の潮流

素粒子について

物質の最小単位である素粒子はクォーク、レプトン、ゲージ粒子、ヒッグス粒子に分類されます。クォークやレプトンは物質を構成し、ゲージ粒子はそれらの間の相互作用を媒介し、ヒッグス粒子は素粒子に質量を与える働きをします。

素粒子の法則が示す「役割」とは

日常生活では宇宙初期の高温状態や天体の中心部の高密度状態では物質はバラバラに分解され素粒子が重要な役割を果たします。現在の宇宙がどのように発展してきたか、例えばビッグバンやインフレーションと呼ばれる宇宙初期の現象の解明、 また高密度天体の内部はどのような状態か、例えば中性子星や超新星爆発のメカニズムなどを探るには、その出発点として素粒子の運動を定量的に予言する必要があります。そのためにはそもそも素粒子の基本法則を知りそれを用いて色んな予言でできるようになることは非常に重要です。

素粒子の運動を記述する「場の量子論」について

素粒子は最小単位でありながら生成・消滅を繰り返して時間発展していきます。この詳しい振る舞いは4次元時空の各点各点に振動する「場」とよばれる一種の波動があり、それが量子力学に従って運動することで説明されます。相互作用するいろいろな種類の素粒子があることに対応して、互いに影響をおよぼし合ういろいろな種類の「場」があります。素粒子の振る舞いを定量的に予言するには量子力学的な場の非線形連立波動方程式を解く問題に帰着されます。この理論体系を「場の量子論」と呼びます。

素粒子物理学の目指すところ...実験と理論の役割分担

素粒子物理学は、素粒子の振る舞いを実験的で詳しく調べ、次の二つを調べます。
  1. 素粒子の関わる物理現象がどんな基本法則に従っているかを解明すること
  2. また基本法則から極限状態でどんな現象がおこるかを予言すること

以前よりも極限状況での実験で以前の基本法則で説明できない新しい現象がでる基本法則を修正・発展させを使ってより適用範囲を広げ、それを用いて未知の現象を予言しそれを実験で確かめるという、実験と理論の両輪で素粒子論が発展してきました。

素粒子物理学のおかれている状況

1960年代から加速器を用いた高エネルギーの陽子や電子ビームの衝突実験でクォーク、レプトン、ゲージ粒子、ヒッグス粒子などを発見しながら、その性質を記述する場の量子論にもとづく基本法則が確立しました。これは「素粒子の標準模型」と呼ばれています。ところが近年、宇宙のさまざま観測から標準模型では説明できない現象が見つかってきました。例えば

  1. 我々の銀河内に大量に分布するが光と反応しない「暗黒物質」が存在すること
  2. また宇宙において物質は大量に存在するがそれにくらべて反物質はほとんどないこと、いわゆる「物質・反物質の非対称性」が生じていること(この非対称をCP対称性の破れとも呼びます)

です。つまり今の理論は不完全であることが宇宙観測から明らかになってきた大革命期にあります。このため、現在は暗黒物質の探索実験とさまざまな仮説の理論の提案と検証、およびCP対称性の破れの証拠の実験的探索とさまざまな仮説の理論の提案と検証が同時進行しています。