超対称性のスケールが1TeVか100TeVかと言われても、きっと素粒子論屋さん以外にはピンのではないだろうか。しかし、ふらっと入ったレストランの食事代が1000円だと思っていたら10万円だった、となると慌てるだろう。
単位を円に言い換えてみるだけで、少しはその辺の大きさの感覚が感情として伝わったりするかもしれない。そう思ってこの文章を書いてみた。
素粒子理論では、たくさんの重要なエネルギースケールが出てくる。ここではそれらを1円=1MeVを使って表してみよう。きっと、MeVとかGeVとかでは湧いてこなかった感情が湧いてくるはず。
念のため、ここではMeVというエネルギーの単位を円で言い換えているだけなので、本当のお金とは関係がない。
また、書いている数値の精度は一桁、あるいは二桁である。
10万分の1円くらい。化学変化の典型的なエネルギースケールはこんな感じである。
質量は有名なmc^2の式により、エネルギーに換算することができる。 最もなじみのある素粒子である電子の質量は、1円に満たない。
湯川秀樹は、核子間の力を説明するのに、中間子を導入し、原子核の大きさから質量を100円くらいと予想した。その後、この粒子は実際に発見され、現在ではパイ中間子と呼ばれている。 なので強い相互作用に関連するスケールはこれくらいから始まることになる。
幅があるのは、電荷を持つパイ粒子と中性のパイ粒子で少しだけ重さが違うからである。
ちなみにミュー粒子と呼ばれる100円くらいの質量の粒子がある。ミュー粒子は強い相互作用となんの関係もないが、たまたまこれくらいの質量になっている。最初にミュー粒子が見つかったときには、一時期これが湯川の中間子だと思われていたらしい。
原子核を作る粒子の一つである、陽子の質量はこんなものである。電子0.5円の2000倍くらいである。ちなみに同じく原子核を作る粒子である中性子も同じくらいの重さである。
素粒子では、cクォークが1300円くらい、タウ粒子が1800円くらいで似たような質量だが、陽子に比べて安定でないために見つかったのはずっと後である。
クォークでは、bクォークが5000円くらいでまあまあ同じオーダー。 tクォークは、いきなり17万円になり、飛び抜けて高い。
弱い相互作用を媒介する粒子であるW粒子、Z粒子の質量は10万円近い。このあたりから弱い相互作用が重要になるスケールである。
最近見つかった粒子であるヒッグス粒子は、13万円くらい、先に出てきたtクォークは17万円くらいで、同じオーダーである。現在見つかっている素粒子の中で最も高いものはtクォークであり、それより高い粒子は見つかっていない。もしこれより高い粒子が見つかったとすると、それは標準模型では説明できない新粒子である。
2015年現在、最も高いエネルギーでの衝突実験はLHCの実験であり、質量中心エネルギーは1300万円である。新粒子や新物理の発見に大きな期待が持たれている。
いきなり、表現が小学生のようになったが、1千億×1兆円という意味である。高くてもこのくらいから量子重力が重要になってくるはずである。
阪大生協名物の天津麻婆丼の熱量(ふつうカロリーで表すやつ)を円で表すとこんなになる。プランクエネルギーの300分の1程度。毎日天津麻婆丼を食べ続ければ1年でプランクエネルギーに達する。